青木 新門 氏

作家・「納棺夫日記」著者

いのちのバトンタッチ

・・・映画「おくりびと」の原作「納棺夫日記」著者・・・

 映画「おくりびと」のアカデミー賞外国語映画賞受賞を契機に、日本の葬送の様子が世界から注目と賞賛を浴びています。「おくりびと」の主演・本木雅弘氏と、その原作である『納棺夫日記』(文春文庫)の著者・青木新門氏との出会いは15年前に遡ります。インドに逗留した本木氏が、ガンジス川に流れる現地の人の遺体を目の当たりにし、「死」と「生」について深く考えるようになり、帰国後、『納棺夫日記』に出会い、本の一説を引用させてほしいと青木氏に手紙を書いたことが発端です。

「おくりびと」で世間の耳目を集めた「納棺師」――。この職業に、ミルク代を稼ぐために就いた青木氏は、28代続く旧家の長男ということもあり、当初、「死=穢れ」というイメージの職業差別に悩みます。しかし、「一族の恥」と罵っていた叔父が死の床で「ありがとう」とつぶやきながら成仏し、多くの遺族からも感謝され、どんな死に顔も綺麗だと思えるようになったそうです。

 当日は、死や死者を忌み嫌う最近の風潮に対して、次代を担う子供たちに身近な使者に接する機会が必要、とのご提言などを語っていただく予定です。みなさまのご来場をお待ちしております。

【講師の略歴】
1937年4月11日富山県生まれ。少年時代は、旧満州で過ごす。早稲田大学中退後、富山市で飲食店を経営する傍ら文学を志す。作家・吉村昭氏の推挙で『文学者』に短編小説『柿の炎』が載ったが、飲食店が倒産。1973年冠婚葬祭会社(現オークス)に入社し、納棺専従社員(納棺夫)を経て、専務取締役をつとめる。1993年『納棺夫日記』を出版しベストセラーとなる。なお、同書はアメリカで『Coffinman』として英訳出版されている。俳優の本木雅弘氏との交遊により、映画「おくりびと」に裏方として協力する。現在はオークス非常勤監査役と著述、講演活動で東奔西走の毎日。














ご意見 【講師・参加者】

講師のコメント (青木新門)
講師冥利に尽きる講演会
本年3月上旬に文藝春秋社から紹介されたといって1通のメールがありました。それがねっと99夢フォーラムとの最初の出会いです。その場で9月の講演の約束をしたように記憶しています。
その後、映画「おくりびと」がアカデミー賞外国語映画賞を受賞したことから、取材や講演会で超多忙となりました。
当日の講演では、映画「おくりびと」への感想、納棺夫になった経緯と仕事内容、葬送に関する提言などについて述べました。
みなさん、非常に熱心に聴いて頂いたので、講師冥利に尽きる講演会となりました。(談)
参加者の声
いのちのバトンタッチ〜生は往き継がれる
山形県 鶴岡市立荘内病院内科・緩和ケアチーム   医師 和泉典子
 私は今映画「おくりびと」が撮影された山形県庄内地方の市中病院で、緩和ケアの仕事をしている。たまたま千葉で他の研修会に参加するので、大網に住む友人に連絡をとったら青木さんの講演会があると誘われた。
 一言でいえば、ただただ感動した。そして泣いた。90歳代の元気なおじいさんも泣いていた。末期がんと告げられた患者さんの家族も、そして私の友人も。青木さんの表情と語りは、優しく、穏やかで、生き生きとしていた。多くの死体との遭遇から、青木さんが見てきたものは「いのち」そのものであった。講演にこめられたメッセージは「死を通してひとつひとつの生が輝き、そして往き継がれること」と思った。
 治ることが難しい患者さんに対して、自分は医師として何もできないと挫折した。医療とは治ることだけが目標なのか。誰にもやってくる光の世界への旅立ちの時まで、患者さんやご家族とともにたくさんのことを感じ、悩む。最期まで希望をもって輝きながら生きることのお手伝いをする。そして同じ時を過ごさせていただく。今の仕事ができることを本当に幸せだと思う。
 青木さんが著書『納棺夫日記』の中で、納棺師になったこと、辞めずに続けてきたことを「振り返ると、何かに導かれた一定の流れであった。」と記されている。青木さんにお会いできたことも、これまでの私も、今の私も「一定の流れ」の中にあると思う。「末期患者には、激励は酷で、善意は悲しい、説法も言葉もいらない。きれいな青空のような瞳をした、すきとおった風のような人が、側にいるだけでいい。」そんな存在でいられるよう、これからも、いのちと触れあい、生と死を見つめる仕事を続けながら、精いっぱい生きたいと思う。
 青木新門さん、そして、私の大切な友人、講演を企画して下さったねっと99夢フォーラムの皆様に心から感謝します。

死生観が覆った青木氏の講演
青山学院大学2年生 杉原 領
 普段考えもしなかった。もし自分の死や、大切な人の死が、不吉なもの、穢らわしいものとして扱われたらこんなに不幸なことはないと講演を聞きながら思いました。そして自分も、このようにイメージしてしまうかもしれないと。ですが、のべ3000体のご遺体を納棺してきた氏の人柄が織り成す語りには、決してそのような感覚はなく、私の死生観を根底から覆しました。「どんな死に顔も、本当に綺麗なんです」と氏は教えてくれました。たくさんの「いのちのバトン」が伝わってくるような言葉でした。
 当たり前のことですが、人は最後の最後まで一人ではない。そう思います。なぜなら、自分の死や、自分の死体を整えてくれるのは、まぎれもなく自分以外の誰かだからです。そんな最期だからこそ、青木氏のタイトルにもあるようにしっかりと「いのちのバトンタッチ」をできるような環境、すなわち人の死の原体験がとても大事なのだと感じました。
 講演をして下さった青木新門氏、このような機会を設けて下さったねっと99夢フォーラム関係者の方々に熱く御礼申し上げます。
参加者のアンケートより

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