池本 美香 氏

㈱日本総合研究所調査部主任研究員・日本プレイセンター協会代表

世界の子育て事情と日本プレイセンター協会の取り組み

 日本は戦後、サラリーマン家庭の増大、夫の家庭での不在時間も増え、親族ネットワークが弱体化し、地域社会のつながりが弱まったなど、さまざまな社会構造の変化によって、子育てが母子だけの単純な構造に変化しました。また、男女雇用機会均等法の出現によって、総合職に就いた女性の子育てが極めて困難なものとなり、少子化がますます進行しています。
 その点、諸外国では、女性の社会進出が進みながら子育てに投入できる時間を増やす施策を講じることで、合計特殊出生率が改善される傾向もみられます。
 そこで、自ら男女雇用機会均等法施行3年目に社会人となりシンクタンクで少子化問題を調査研究する、池本美香氏に世界の子育て事情や少子化対策などを語っていただきます。
 また、池本氏は、子どもの自発的な遊びと、教育者としての親の重要性に注目した活動を展開するニュージーランドのプレイセンター活動に触発され、日本プレイセンター協会を立ち上げました。


池本美香(いけもと・みか Ikemoto Mika)氏の略歴

1966年神奈川県生まれ。日本女子大学文学部英文学科卒業後、三井銀行(現三井住友銀行)入行、三井総合研究所等(現日本総合研究所)出向。2000年千葉大学大学院社会文化科学研究科博士課程修了。博士(学術)。現在、㈱日本総合研究所調査部主任研究員として少子化に関する調査研究を担当。中央教育審議会初等中等教育分科会幼児教育部会臨時委員、東京都次世代育成支援懇談会委員等歴任。主著『失われる子育ての時間――少子化社会脱出への道』(勁草書房)、『少子化と日本の経済社会』(共著、日本評論社)、『論争 日本のワークライフバランス』(共著、日本経済新聞社)。








講演レポート
㈱日本総合研究所長さ部主任研究員・日本プレイセンター協会代表
池本 美香 氏
ご意見  【講師・参加者】
講師のコメント (池本美香)
「ねっと99夢フォーラム」のつながりに期待する
     (株)日本総合研究所 調査部 ビジネス戦略研究センター
主任研究員 池本美香
「ねっと99」という名前が九十九里にちなんで「99回講演会をやったら解散する」という意味だと知り、また社員研修のための講演会に地域の人にも参加してもらうというかたちからスタートしたことをうかがい、とても素敵な企画に参加できたことをうれしく思いました。オフィスとして使われている空間が、コンサート会場になったり、講演会場になったり、なにごともひとつだけの目的で使うより、いろんな目的で使ったほうが、お金の節約になるだけでなく、なんとなく楽しいなあと思いました。今後も「ねっと99」をきっかけに、いろいろな人が交流してつながることで、新しい発見や力が生まれることを願っています。長時間話を聞いていただき、本当にどうもありがとうございました。
参加者の声
『かがり火』菅原歓一
「子育て」に限らず、教育や医療、福祉については北欧の国々が先進地として紹介されることが多い。今回も北欧やニュージーランドの例を紹介していただいた。優れた事例には謙虚に学ぶ姿勢は大切だが、外国に比べてわが国の取り組みは遅れていると悲観することはないと思う。北欧と日本とでは国のかたちも人口も違うのである。スウェーデン900万人、デンマーク550万人、イギリスでさえ6000万人である。ニュージーランドにいたってはわずか400万人である。
 もし日本の人口が5~6000万人だったら、欧米からの視察者が後を絶たないほど素晴らしい育児や教育の体制を築き上げることだろう。私たちは、日本人の精神と日本の風土に合った日本型の子育てシステムを構築するしかないのではないか、というようなことを池本さんの話を聞きながら考えた。
「子育て」に関しては、地域共同体の復活が大事だと近年とみに言われるようになった。虐待や家庭崩壊が増えて、地域社会で助け合う必要性が叫ばれているのである。
しかし、おしょうゆを貸し借りする関係を復活することができるだろうか。今の日本では、隣人が実際にしょうゆを借りに来たら、それが理由で近所付き合いは断絶してしまうのではないか。強い人間関係で結ばれている地域社会というのは、地震などの非常時には強力な力を発揮するけれど、一方、平常時は人間関係の煩わしさを受け入れねばならず、時にはプライバシーの侵害をお互いに許容し合わねばならない社会でもある。
われわれにいまいちばん必要なのは、隣人と助け合う関係をつくりながら、相手が不快を感じる領域には立ち入らないという作法を身につけることである、というようなことを池本さんの話を聞きながら考えた。
●だからこそ、大里綜合管理が取り組んでいる地域社会との連帯は、優れた社会実験として大いに期待もし、尊敬もしているのです。
参加者の声
すべての子供たちが安心して遊べる場所の確保を
一宮町 まちづくり推進課 まちづくり推進グループ
副主査 山口裕之
「ひとりの子供も悲しい目にあってはならない。これはイギリスの政府文書の1行目です。」
「日本では児童虐待が増加し、子供を保護する施設が満員状態になっています。」
「虐待は母親のせいではありません。社会が親にストレスを与えているからです。」
池本先生のお話を聞いて日本の20代、30代が置かれている状況、悩み、どれも深刻だなと思いました。若者の未婚問題や少子化などは全ての世代の方に影響する問題です。
子育てに対する不安やお金の問題について、解決の糸口になりそうな海外の事例を聞くことができ、とても勉強になりました。
池本先生ご自身も偏差値教育、男女雇用機会均等法などの時代を経て、常に競争社会で生活し、現在は小さなお子さんの育児に励まれているとのこと。精神的にも経済的にも不安定になる乳幼児期の若いお母さん達への支援が必要なことや、先生が全国に広めているプレイセンターというニュージーランドの保育システムがそのためにどれほど良いものなのかが真剣に伝わってきました。
子供を育てるお母さんたちが幸せな社会にするためには、すべての子供たち、障害のある子供たちも安心して遊べる場所をつくるにためには今自分に何ができるだろうかと考えさせられる内容でした。
講演後に会場の参加者の皆さんからご意見を聞くことができました。そこで「自分が先に手を出してしまうのではなく、求めている人の声をよく聞くことが大事だよ」とアドバイスをして頂きました。
ねっと99夢フォーラムの素晴らしいところは講師のお話はもちろんのこと、参加している皆さんがとても良い方たちで私のように顔見知りでない人の話もきちんと聞いてくださるところです。そのための雰囲気づくりにねっと99のスタッフの皆さんが努力されていることに大変感謝しています。本当にありがとうございます。次回の講演も楽しみにしています。
参加者のアンケートより