田邉 敏憲 氏
㈱富士通総研経済研究所主席研究員 2007.09.08
『国際競争にも勝ち抜ける
農・食・医産業の統合イノベーション』
今回のゲストは、田邉敏憲氏です。
各種イノベーションにより、農林水産業を単に食料や木材を生産するだけでなく、戦前までのように素材(マテリアル)や燃料(エネルギー)をも供給する産業として復活させ、産業全体の生産性を引き上げる研究をされています。特に、食品容器の素材として使われている発泡スチロール樹脂を籾殻などバイオマス素材に代替するマテリアル・イノベーション、さらには一旦食品容器として使った廃棄バイオマス容器の燃料としての再利用は、農林水産業を総合産業としてブレークスルーさせる可能性を秘めているとのことです。
また消費者側で急速にニーズが高まっている「安全」「美味しい」「高栄養価(戦前並みの免疫力)」作物を適切な価格で安定的に提供することは、農水産業の「食料産業」から「健康(ヘルスケア)産業」化です。
こうした農・食・医産業を組み合わせた地域のイノベーションが、食料・エネルギー・木材などの自給率引上げ、あるいはこれら産業での効用創出、地域再生に止まらず、荒廃が止まらない日本国土の手入れにもなると力説されています。
存在感を増す中国に対して、日本は「木・火・土・金・水」で競争優位性を維持することができるとの田邉氏の、将来の展望が開ける講演会へのご参加を心よりお待ち申し上げます。
<Profile>
昭和24年広島県生まれ。京都大学法学部卒。48年日本銀行入行後、大蔵省官房調査企画課出向、ニューヨーク駐在員、発券局総務課長、長崎支店長などを歴任し、平成9年日本銀行を退職。10年長崎県知事選挙立候補。同年㈱富士通総研入社。
現在、同経済研究所主席研究員、日本の国益委員会代表、東京大学大学院教官〔MOT担当〕、㈱大島造船所常務取締役農産事業部長、㈱AOAコーポレーション代表取締役社長など兼務。
著書に「手にとるように金融のことがわかる本」(かんき出版)、「新資源大国を創る」(著者、時事通信社)等がある。
- 講演レポート
- 国際競争にも勝ち抜ける 農・食・医産業イノベーション
- ㈱富士通総研経済研究所主席研究員
- 田邉 敏憲 氏
- ご意見 【講師・参加者】
- 講師のコメント (田邉敏憲)
- 「ねっと99夢フォーラム」への感想
- 日本の各地域ともに、地元の有利な条件を活かした持続可能な経済社会づくりが求められているが、なかなか妙策がないというのが実情だ。しかし今回は、2つの点で、日本にもこういうコミュニティがあるのかと深い感動を覚えた。一つは、東京から1時間という通勤圏にありながら田舎的な"粘着性"を感じさせ、また農業を含めた一人数役的な能力を備え、かつ地域興しの熱意にも富む多士済々のプレーヤーが多くいらっしゃること。この点、人口が500万人強と北海道並みの国ながらノキアなどの世界的企業を生み出しているフィンランドが一人数役こなす社会で活力に富んでいるのと印象が重なった。もう一つは、しかも、行政の責任者を含めて、いろいろな職種、立場の人たちが、より活力あるコミュニティづくりに向けて、自発的な「ねっと99夢フォーラム」という"場"を作っていること。少子高齢化社会に不可欠な、いわば"擬似大家族主義"的なコミュニティがここにあると感じた。日本の求められる産業社会モデルとして全国に元気を発信していただくよう期待したい。
- 参加者のアンケートより