國米 欣明 氏

医師・医学博士

 現在、日本では、年間3万件超の「キレる子ども」による校内暴力が発生し、低年齢化して小学校での発生率増加がもっとも高くなっています(文科省調査)。その上14万人の不登校、62万人のニート、160万人の引きこもりがいます。この膨大な数を発生させている原因に國米欣明著『決定版 その子育ては科学的に間違っています』(河出書房新書)は科学的なスポットをあてました。これらに共通している問題点は、「子どもの耐性低下」にリンクしている脳の「自己抑制力の脆弱性」です。脳の自己抑制力(自制心)を司る前頭前野の一部である「眼窩(がんか)前頭皮質」の発達の臨界期は意外に早く、3歳までにほぼ完了します。したがってそのことを考慮した子育てが重要になります。
 ひとたび身勝手、すぐキレる、共感性・思いやりがない、暴力的などの特徴があらわになると、対応が極めて困難です。「キレる子」や引きこもる子になってからの対応は大変な労力や犠牲等を伴い、家族の負担が大となります。
 そしてまた、異様な青少年犯罪、シュガー社員による身勝手、子どもたちの「学力」国際ランキングの著しい低下、学級崩壊・小1プロブレム――などなど、これらの根本原因には、やはり子どもたちの「自己抑制力の脆弱性」が存在しているといわざるをえないでしょう。
 子どもの「我慢」や「忍耐」「やる気」を育むためにも、十分な愛情とともに、間違いのない「科学的な子育て」の英知が必要です。そのトレーニング法や対応策を、國米氏がわかりやすく解説します。



國米欣明(こくまい・よしあき)氏の略歴
岡山県津山市生まれ。広島大学理学部物理学科教養課程修了後、広島大学医学部医学科卒業。岡山大学医学部第一外科医局長、岡山大学教育学部看護教員養成所講師兼任。幸町病院院長、幸町記念病院名誉院長、岡山県社会福祉審議会副委員長等歴任。医学博士。『決定版 その子育ては科学的に間違っています』(河出書房新書)、『3歳~18歳 教えて! 子どもの反抗期 ~ 「異常な反抗」を防ぐ科学からのアドバイス』(戎光祥出版)など教育に関連した著書多数。








椎名山武市長による挨拶

質疑応答の様子

講師の感想

深刻な日本の子育ての現状

医師・医学博士 國米欣明

 一般のテーマと違い、子育てに特化したテーマなので少しばかり不安でしたが、ご出席の皆さん方に熱心にお聴きいただき安堵しました。
 改めて日本の子育てに深刻な現状を感じた次第です。
 講演終了後、山武市の椎名市長、金田教育長など多くの方々を交えての懇談も大変に有意義で、皆さんの教育への熱意を感じました。また、たくさんのご教示をいただき感謝しております。
 山武地域のお子さんたちのすこやかな成長を心から祈念しております。

参加者の声

キレない子どもを育てるために

横芝光町町長 齊藤 隆

興味深い講演がありました。
~こどもの反抗期と「異常な反応」を防ぐ 脳科学からのアドバイス~
と題して医学博士、医師、元岡山大学医学部付属病院第1外科講師・教育学部養護教員養成所講師としての國米欣明氏の様々な観点から、「キレる子ども」についての講演でした。
子どもには3歳前後の幼児期、また思春期などに「反抗期」がある。
この反抗期に変化が起こっている。
3歳前後第一反抗期「自我の芽生え」の無い子どもが増えている。
7歳から9歳頃の中間反抗期(口答え時期)、本格的な反抗期と勘違いして過剰に反応しない事。
12歳前後の思春期を迎える頃が第二反抗期「自我の確立」のための戦いであり、精神的な独立宣言でもある。
この時期の反抗は大事なものだが、「親子密着型や友達型」では大事な第二反抗期が現れない事があり、その自立不全の旅立ちはその後に大きな問題を残す事が多い。
思春期には子どもの「行動言語」を読む事が大事。
行動言語とは、人間が行動で示す言葉なので「言葉による対話よりも、まず行動を見よ」と指摘。
「キレる」などの子どもや大人の異常行動には、様々な研究がされているが脳科学から見ると分かり易い。
人間には動物としての本能がある。
この本能を知性や理性が抑制する。
本能は大脳辺縁系が担当し、理性は大脳新皮質が担当するが、これは直接つながっていない。
大脳辺縁系が暴走すると動物のように直接的な行動となり、闘争衝動と逃走衝動に支配され、現実からの逃避へとなる。
これをつなげてコントロールし理性ある行動をさせるのが眼窩前頭皮質で、大脳辺縁系の暴走を抑制し人間が動物と違う生き物となる。
この眼窩前頭皮質の発達は3歳までが重要であり、その後は訓練によってコントロールを強化する事が方法である。
「キレる子ども」は何も日本人だけの問題ではない。
アメリカやイギリスフランスなど世界の先進国といわれる国のほとんどで発生した問題。
この原因は「子ども中心の育児法」子どもは親の愛情で育てる事が一番で放任、自由主義があるとされ、アメリカなどでは国家プロジェクトとして研究し対処している。
その1つが「セカンド・ステップ」と呼ばれる教育プログラムで、その優れた点は「すぐキレる子」のどこに問題があるかを詳細に分析し、その問題解決の核心に迫るトレーニング法になっている事。
この教育プログラムは3つの主要部門から構成される。
第1の部門「自分を他人に合わせる事が出来るようにする入門編」
第2の部門「自己抑制力を育むハイライトとなる部門」
第3の部門「実践部門」
なぜ日本でこれらの研究が進まないか?これは過去の文部科学省の方針を根底から否定する事にも繋がりかねないため、批判を恐れているため。
すぐキレる子ども達の社会的影響は、成長とともに新たに「すぐキレる子ども」を再生産している。
家庭での凄惨な児童虐待、理不尽なモンスターペアレンツの出現、シュガー社員の増加などなど、大人になって目に余る行動や対話ではなく直接的な行動に出たり、人の話を聞けず自己中心、自分の希望通りにならないと誰かを批判するしか出来ない、自己抑制力に欠ける、忍耐力がない、身勝手、相手の気持ちを理解しない、共感性がない、怒り恨みねたみ嫉妬などの感情が強い、何でも人のせいにする、些細な事でもすぐ怒るなどなど。
こういう反応を分析すると以下のような最終目標を上げる事が出来る。
「キレない子ども」に育てるには、思春期になるまでに以下の5項目が重要
1,自分の感情が抑制できる自制心にある事
2,正しい社会性と規則を守る意志がある事
3,他人に迷惑をかけない事
4,相手の気持ちが理解できる事
5,決して暴力をふるわない事

(さいとうたかしブログより)

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