村瀬 誠 氏

東邦大学薬学部客員教授
京都大学防災研究所非常勤講師
薬学博士

 全国で1時間あたり50ミリ以上の豪雨が発生する回数は20年前の約2倍で、近年、各地でゲリラ豪雨による土砂崩れや浸水などの被害が頻発しています。
 “ドクトル天水”こと、村瀬誠氏は、墨田区の保健所で環境衛生監視員として働いていた30年前に、区内で大雨が降るたびにビルの地下の飲料水タンクが逆流した下水で汚染されるという問題に直面しました。同氏は、「この洪水何とかならいか」と役所の縦割りを乗り越えて仲間と自主研究を始めました。
 そうして見えてきたのは、①コンクリートやアスファルトに覆われた都会では、雨水は僅かしか浸透せず、残りは一挙に下水道に流れ込む、②墨田区の年間降雨量2000万トンが区民の年間水道使用量に匹敵する――という事実でした。
 村瀬氏等の働きかけや、当時の墨田区長の説得により、両国新国技館に都市型洪水の防止と雨水の有効利用を兼ね備えたシステムが完成すると、雨水タンクは全国各地に広がっていきました。同氏も設計に関与し、現在建設中の東京スカイツリーの開発地域の地下には、25メートルプール9杯分の2635トンの雨水タンクが建設中です。
 また、氏が理事をつとめるNPO法人雨水市民の会は、地下水のヒ素や塩害に悩むバングラデシュの人びとを雨水で救うスカイウォータープロジェクトを推進中です。その活動にいま世界が熱い視線を注いでいます。


村瀬 誠(Murase Makoto)氏の略歴
1949年大阪市生まれ。千葉大学大学院薬学研究科修士課程修了後、墨田区職員として保健所及び環境保全行政に関わる。国技館、東京スカイツリーなど都市の雨水利用のプロジェクトやバングラデシュのスカイウォータープロジェクト等に関与。前国際雨水資源化学会副会長、雨水東京国際会議実行委員会事務局長、雨水市民の会事務局長等歴任。㈱天水研究所を設立し、ライオン㈱と協働で「両国さかさかさ」設置。「イノベイティブ雨水プロジェクト」でロレックス賞準入賞、フランス「未来を変える世界の人々80人」に選出。薬学博士。著書『都市の水循環』(NHKブックス)、『雨を活かす』(岩波アクティブ新書)等。






講師のコメント
雨水ネットワークの広がりに期待!
ドクトル天水
本日のフォーラムをきっかけに、ハッピーで平和な世界を実現していくために、雨水のネットワークの輪が千葉にも広がることを期待しています。
No More Tanks for War, Tanks for Peace !! ”
参加者の声
「雨水タンクから平和をつくる」
大網白里町 松本みのり
今回の講演に参加して、村瀬先生のお話ひとつひとつに目が覚める思いがしました
先生が普及に力を入れておられる雨水タンクの存在は、何年も前から知ってはいましたが、自分では「いつか自宅でも使ってみたい」という発想しかありませんでした
けれども、先生が区役所時代に、洪水に悩まされる人々の声を聞いて「なんとかしてあげたい」という思いから雨水を溜めて活かすことをお考えになったこと、安全な水がなかなか手に入らないバングラデシュの村々で、貧しい人々でも買うことのできる安い雨水タンクの開発と普及に力を注がれている話を聞いて、困っている人のために「なんとかしてあげたい」という情熱こそが、コツコツと世界を変えていくのだなぁ、と感銘を受けました
お金もモノも自分のためだけに使っては、そこで終わってしまう。けれど、誰かの役に立てられれば、そこから生きて周っていくのだと教えられました。
ただ、ユニセフが掘った100万本の井戸のほとんどがヒ素に汚染されていた、というお話もあったように、良かれと思うことをひたすらに進めるのではなくて、自分たちが行ったことのその後がどうなっているのかを振り返ってみていくことが、何か事を始めるのと同じくらい大切であるとも感じました。そのことを踏まえたうえで、私にもひとつ誰かの助けになることができれば、と思いました。

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